文化概論

カルチャー多め。演劇、アニメ、美術、音楽の周辺について。

「カメラを止めるな!」の面白さをネタバレ完全無しで解説してみる

話題ですよね。見てまいりました。

 

見ている最中から、「ああこれは面白くなるやつだ、これは時が経つにつれてどんどん加速度的に面白くなるやつだ」と思いながら見ていた。し、事実その通りになった。

 

ラストシーンに映る登場人物たちを見ながら、私は彼らに、謎の「一体感」を感じていた。もちろん出演者の中に知り合いがいたわけではない。応援している役者が出ていたわけでもない。にも拘わらず、私はなぜか、登場人物たちに対して、あたたかな一体感を感じていた。なぜかとても、彼らとの心の距離が近くなったように感じたのだ。

 

私は、鑑賞後に胸に去来したこの謎の「一体感」に、「カメラを止めるな!」の面白さのヒントがあると思っている。

 

本作のあらすじはこの通りだ。

とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。​本物を求める監督は中々OKを出さずテイクは42テイクに達する。そんな中、撮影隊に 本物のゾンビが襲いかかる!​大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。
”37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”……を撮ったヤツらの話。

本作自体がゾンビ映画なのではなく、それを撮影する映画人たちの物語なのである。

 

ここでひとつ、本作を絶賛している人々に注目してみよう。芸能ニュースにもなったほど本作を称賛したのは、指原莉乃さんだ。

それに加え、「水曜日のダウンタウン」などを担当するTV番組プロデューサーの藤井健太郎さんや、おもしろ系記事を書かせたらピカイチとの呼び声高いライターのヨッピーさんなどが、同様に絶賛の声をあげている。

 

彼らには共通点がある。それは「エンターテインメントを企画して、発表している」人たちであるということだ。アイドルとして楽曲やステージを作りだしたり、TV番組を演出したり、多くの人に楽しんでもらえる記事を生み出したりしている。

 

本作は、「エンターテインメントを企画して、発表している」人たちから、すこぶる評判がいい。あくまで個人的な肌感ではあるが、これはあながち間違っていない事実であると思う。

 

彼らが行っている「エンターテインメントを企画して、発表する」という行為。これは、芸能人やTVマンなど、一部の才能がある人達だけが行えることであるように感じられるが、実はそうではない。

 

思い返して欲しい。あなたはこれまでの人生の中で、何度「本番」と呼ばれるものを体感しただろう。中学のクラス対抗合唱祭、高校の文化祭でのお化け屋敷…。なんなら、小学校の運動会の組体操だって「本番」だ。一生懸命練習してきた組体操を、ギャラリーである家族たちや、その他の学年の生徒たちに披露する。最後の5段タワーが出来上がったとき、ギャラリーたちはどよめきの声をあげながら拍手をしていたはずだ。

 

そう。タレントや芸人でなくたって、私たちには間違いなくエンターテインメントを披露した過去がある。そしてその体験に付随して、その時なんとも言えない「高揚感」や「カタルシス」、「達成感」についても記憶しているはずだ。

 

映画「カメラを止めるな!」を見終えたのちに登場人物たちに感じた一体感は、この「エンターテインメントを企画して、発表」した後に、クラスのみんなとともに感じていたなんともいえない結束感に近い。この感覚は、ただ「映画人たちの悲喜こもごもを描いた映画」をみただけでは、生まれない。なぜなら、それは「映画人たちの悲喜こもごもを描いた映画」をみただけであって、「映画人たちの悲喜こもごも」を体感したわけではないからである。

 

本作は、学生をはるか昔に卒業してしまった大人たちを魅了している。それは、かつて体感していた、エンターテインメントを作り上げた時の「高揚感」「一体感」「結束感」を、怒涛のストーリー展開とともに呼び覚ましてくれるからではないだろうか。劇中のことばを借りるなら、「出す」ではなく「出る」のである。

 

そして、本作がエンターテインメントに従事する方々を虜にしているのは、彼らが普段から得ているカタルシスを、「純度100%」のかたちで見せてくれるからではなかろうか。(彼らが日常的に作り上げているエンターテインメントには、様々な不純物もあるだろう。醜い部分も、少なからずあるはずである)

 

本作を製作したのは、演劇や映画の監督・俳優を養成するスクール「ENBUゼミナール」である。彼らは「エンターテインメントを作りあげた」際に生じる、あの感覚に憑りつかれた人たちだ。つまり、たとえるならば、ドラッグによる快楽の虜になった人々が、そのドラッグを「純度100%の一番気持ちよくなれる状態」で提供してくれているようなものなのである。

 

そりゃあ、気持ちよくもなるよね。ハマっちゃうよね。

 

まとまらないけれど、要は、なんだかそういうことな気がする。単に、ストーリー展開の巧みさだけだったら、ここまで話題になってないと思う。この快楽の部分が絡んでいるから、「カメラを止めるな!」は大人たちを魅了しているのだと思う。