文化概論

カルチャー多め。演劇、アニメ、美術、音楽の周辺について。

本屋を始めたいひとが大切にするべき「2つの力」

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7月16日、原宿VACANTにて行われたイベント「本屋になりたい」に行ってきました。

当日登壇したのは、森岡書店の森岡督行さん、Flying Booksの山路和広さん、そして『これからの本屋』の著者であり書肆汽水域の北田博充さんの3名。

イベント趣旨としては、これから本屋を目指そうとする人たちにむけてアレコレを指南するというもの。ですが、本業界でもかなりオリジナルな活動をされているこの3名がそろって、単なる開業セミナーのようなものになるはずもなく。本というもの、本を買うという事について、多角的に考えさせられるめちゃくちゃ良いイベントでした。

以下に、記憶する限り内容をまとめていきます。

新刊書店を始めるには「取次」が不可欠

新刊書店を始めるには、まずなんといっても新しい本を仕入れる必要があります。

本を仕入れるのに手っ取り早いのが、「取次」と呼ばれる本のおろし業者と提携すること。しかし、大手の取次との口座を開くには、かなりのハードルがあるのだとか。「月収200万があること」とか「保証金が400万くらい必要」とか「連帯保証人がいないとダメ」とか…。商売を始める、っつってんのに、そんな元手ないわい、って感じですよね。

 

そこで、そういったハードルの低い小さい取次というのもあるのだそう。「子供の文化普及協会」というところは、保証金などもなく、簡単な書類だけで口座開設ができるとか。

そのほかにも、出版社から直接本を仕入れちゃうというのもOK。買い切りで8掛け(返品不可で、80%の値段で買える)くらいで仕入れられるとか。フツーに電話して仕入れるそうです。

または、あまりないらしいのですが書店から二次卸をさせてもらうという方法もあるみたいです。カフェの一角でちょっと本を売りたい、って時には書店から仕入れちゃうほうが楽かもですね。

 

このあたりの参考図書として、辻山良雄さんの「本屋、始めました」や、内沼晋太郎さんの「これからの本屋読本」が紹介されていました。

 

ちなみに、森岡書店さんは取次を使っていないそうです。「出版社の人と飲んでいて、その場で仕入れの話がきまることも。だから飲み会って大事ですよ(笑)!」と森岡さん。

古書店を始めるには、もうちょっといろんな手段がある

一方、古書店の場合は始め方が全く異なるのだとか。古本を仕入れる方法は、主に下記のようなもの。

・自分の蔵書を売る

・人から買う

ブックオフ古書店から買う(いわゆる「せどり」)

・古書組合に入って交換会という市場に行く

・外国で仕入れる(しょっちゅうはできない)

この古書組合は、入らなくてもやっていけるのだそう。(たしか下北沢の古書ビビビなんかは、組合に入っていなかったはず…)

新刊書店と古書店で一番違うのは「利益率」

お三方が口をそろえていっていたのは、「利益率が違う」ということ。

新刊の場合は、よくて7掛け、つまり定価の70%ほどの価格でしか仕入れることができません。対して古書は、数十冊まとめて1万円で仕入れた古書の中に、実は2万円で売れる本があった!などということもあるそうで、利益率的には古書店のほうが高いのだとか。

 

ここは結構意外でした。冷静に考えればわかることではありますが、なんとなく古書店って全く儲からないイメージがありましたので…。利益率の面でいえば、古書店のほうが上であるというのは大きな発見でした。

新刊書店と古書店、向いてる人/向いていない人って?

山路さん曰く、「古書店は、どんなにいい本でも1冊売れたら終わり。だから自分の売りたい棚というものが維持できない。なので、おすすめしたい本を多くの人に伝えたいなら新刊、特定のジャンルを深堀して追求したいなら古書」がよいのだそう。

 

また、新刊書店と古書店を、農耕と狩猟にわけて解説する一場面もありました。

新刊書店は、じっくりと1つの棚を作り上げて耕していく農耕民族のイメージ。対する古書店は、特定の1冊を探し求めて、まさに狩りにいく狩猟民族のイメージ。と、いえるのだそう。

 

ここでもすこし自分は意外でした。だって、街の古書店で店番をしている白髪のおじいちゃんを見ても、全然狩猟的と思えないから(笑)。B&Bの内沼さんのほうが、よっぽど意識の高い狩猟民族の感がある。でも、そうじゃないのだそうです。ここでもなるほどと感じ入ってしまいました。

本屋をやりたいけど、そんなめちゃくちゃ本の知識があるわけじゃないから超不安だよう~っていう人はどうしたらいいの?

この質問は、当日の司会進行を務めてくださったVACANTの方が出してくださいました。ナイスクエスチョンです。聞きたかった。

 

これに対するお三方の回答は、おおむね一致。「知識がないことは当然。恥じるな、学べ。」でした。

 

この世には到底読み切れない数の本があるのだから、知識がないことを憂いていてもしょうがない。お客さんから教えてもらうことも多くあるので、そこで学んでいけばよい…との力強いお言葉をいただきました。

山路さんは、「知識よりも磨いてほしいことは、感性と編集力」とのこと。どの本を選んで、どのように並べて見せるのか、というところは知識では鍛えられない。だからこそ「感性を磨くために美術館に行ったりすることもとても有効だと思う」とのこと。

 

この部分はとても救われたというか、肩の荷が下りた思いですね。知識量で焦るよりも、感性と編集力。どう選んで、どう見せるか。ここを追求していくのが大事。自分はどんな感性で、どんな編集をして、どんな本屋を目指すのか。この自問自答を繰り返し行っていくことが、本屋開業のための第一歩なのかもしれませんね。 

 

一旦この辺で。まだ続きます。