CULTURE STAND

カルチャー多め。演劇、アニメ、美術、音楽の周辺について。

木ノ下歌舞伎「隅田川/娘道成寺」について

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先週末に見てきましたよ、木ノ下歌舞伎。薄れゆく記憶をもとに雑文を書きますよ。

 

木ノ下歌舞伎、本当に大好きでね。「黒塚」でやられて以来、東京で見られるものは結構見ています。開場時間には絶対遅れないように駆けつけ、当日パンフレットは必ず熟読します。かなりファン。なんていうか、本当に木ノ下歌舞伎を通じて古典と心を通じ合わせられるんですよね。古典って、かなり単純なものが多くって。今回の公演もそうだけれど「子どもを連れ去られて悲しい」とか「愛する人と一緒になれなくて辛い」とか。そういうマジ超絶普遍的な感情に揺れ動く人たちの様が、ファンタジーな要素とともに描かれる。けっこう、いいもんですよ。かなりドラマチックで。歌舞伎を真正面から見に行くと、結局セリフが一言も聴き取れなくってまじつまんなかったな、ってなってしまうんですけれど、木ノ下歌舞伎は違いますよ。木ノ下歌舞伎は、歌舞伎をはじめとした古典作品を「現代演劇の舞台にのせてみたらどないなりますかね?」っていうことに常に挑戦している団体で。もう全然、歌舞伎の知識必要ないです。普通に現代演劇として見られる。古典作品気になるけれど、勉強するのがしんどいっていう人には絶対おすすめ、木ノ下歌舞伎。

 

で、今回の公演。「隅田川/娘道成寺」。なんとダンス公演ですよ。「隅田川」のほうを白神ももこさんが、「娘道成寺」のほうを、きたまりさんが踊ります。さっきも書いたように、私は木ノ下歌舞伎のドラマ性みたいなところがすごくすきなので、今回ダンス公演ということでどうかなあと思っていましたがお見事です。超よかったですよ。

まず白神ももこさんによる「隅田川」。ひとさらいに息子を連れ去られた母親が、彼の塚を隅田川で発見して、そこで息子の霊に会う。んだけれど、夜明けとともに息子の霊が消えて行ってしまって悲しい。っていうような内容。一番はじめは、現代の隅田川のクルーズ船?かなにかの船頭を務めている白神さんが登場して、現在の隅田川の観光名所をアナウンスしていくというシーンからはじまります。このシーン、すごく重要だったなって思って。なんというか、このシーンがあったことで劇場が一気に隅田川の川辺になったというか…。結構長くやってくれたんですよね。アナウンスとともにアサヒアートビルのあの金のオブジェとか、スカイツリーとかが観客の脳裏に浮かぶ。「隅田川」を思い浮かべさせるにはすごく良い時間だったなと。で、いま振り返ったら本家「隅田川」にも出てくるんですね、船頭さん。母親に息子の死を知らせる役。この辺のリンクも心憎いですよね。

 

それで、さらに印象的だったのは、母親を表す白神さんが、息子の塚にまたがるシーン。塚は三角錐のとがった部分を切り落としたような、プッチンプリンを皿に出したようなそんな形をしているんですけれど、そこにこう、上からガバッとまたがるんですよね。このシーン、息子の塚を見つけたときの様子なのか、息子(の霊)と再会を果たしたときの様子なのか、なにを表しているのかはきちんとは説明されないんですけれど、まあいずれにせよ、このね、またがり方にね、すごく母性を感じました。エロいとかっていうのでは全然なくって、なんていうのかな、なんかこう周りの目を全く気にしない覆いかぶさり方というか…子を守る母親って、こんな感じで一心不乱なんだろうなあと。体全身で抱きかかえる、覆いかぶさる。「隅田川」は"狂女物"と呼ばれているらしいんです。息子がいなくなって、結果再会できずに死んでしまって、やっと霊で再会できたと思ったのにまたいなくなってしまったという悲劇的状況をうけて狂った女を描いているから。この"狂い"は母性からくるものだったんだなあと思います。それって、きっとどんな女の人にも、男の人にさえもあるものですよね。白神さんのダンス。初見でしたがすごい見ごたえ。肉体って感じ。うん。コンテンポラリーの方の体は細すぎなくていいですよね。

 

そして「娘道成寺」。きたまりさんの迫力やばかったー。こちらの話は、ひとめぼれした男にそっけない態度をとられてブチ切れた女が、蛇に代わってしまってその男を焼き殺すというような古典がもとになっています。で、その女の化身である白拍子(踊ったり舞ったりする人)が、道成寺に戻ってくる様子を描いたのが「娘道成寺」。白拍子ということで、きたまりさんは最初、白装束のうえに赤い衣をまとったような衣装で登場するんですよね。で、だんだん踊りながら脱いでいくと。その様子がなんともまあ「蛇」っぽくて気色悪い(笑)。脱皮しているようでした。脱皮して脱皮して、だんだんと女の肌が見えてくるのが、コワイコワイ。きたまりさんのメイクや表情もすごかった。白塗りっぽい下地に、目元に赤を差す、あのメイク。これ仮に、きたまりさんが滝川クリステルみたいな顔だったら、あれ、全然似合わないし、雰囲気も出ないと思うんですよね。ダンス公演は体の運動をみるものですけれど、きたまりさんの演出はビジュアル(いやまあ体の運動もビジュアルの一個ではあるけれども、まあ所謂一般的なビジュアルって意味ね)でも楽しめた。めちゃ雰囲気でていた。目の前にいたなー。白拍子

 

今回も、古典を通じて人のいろんな感情を追体験しました。すごく豊かな時間。本当にいいですよ。木ノ下歌舞伎。夢中になれる。今後は「東海道四谷怪談」(6時間の超大作…!!!)もあるし、「心中天の網島」リクリエーション(これ初演みてギャン泣きしたやべえ公演)もあるし。楽しみすぎる。網島また観られるのやばすぎる。木ノ下歌舞伎があるから、演劇を離れられないとさえも思うのよ。楽しみだー。